「ボクの音楽武者修業」 小澤征爾 新潮文庫


彼が24歳でヨーロッパに渡ってから
(なんとスクーター旅行)たくさんの賞を
総ナメにして、ニューヨーク・フィル
副指揮者に就任するまでの3年間のことが
綴られた自叙伝。
なんと言っても、文章からこぼれ落ちる彼の品の良さ、
誠実さ、明るさと若さが、トントン拍子(に見える)サクセスストーリーを嫌みなく読ませてくれる。
若く、健康で、才能にあふれる人の振りまく強烈な
パワーをとても感じた。


兄の結婚式にも仕事で出れず、彼が送る電報に、思わず
ホロリときた。

オデコアネキ トシオアニキ タカサゴヤ イワイノサケ
セイジヒトリノム コンゴモヨロシク ネガイタシ
カイサクオヤジ サクラオフクロ ココロヨリオメデトウ
ナガイキ シテクレ セイジ

そして、彼が久しぶりに、日本に帰国するシーン。
友人達の合唱。「夕焼けこやけ」と「よく訪ねてきて
くれたね」…。


前向きに、強く生きている人が好きだ。
そして、「私はここまで、今の仕事に熱中できている
だろうか」と帰り道、一人つぶやいていた。